猫は「小さな犬ではない」:吐かせにくい理由と、昨年多かった異物
年間を通して、「異物を飲んでしまった!」という事故は決して少なくありません。
犬の場合、誤食直後で条件が合えば、お薬で嘔吐を誘発(催吐)し、吐くことで異物を取り出せることがあります。
「吐かせる」と聞くと、かわいそうな処置に感じられるかもしれませんが、多くの場合、薬によって起こる吐き気は一時的なもので、適切な方法とその後のケアを行えば、速やかに問題が解決することがほとんどです。
しかし、猫は犬と同じようにはいきません。
「猫は小さな犬ではない」という言葉があるように、この考え方は、異物誤食への対応、特に催吐処置においてもまさに当てはまります。
猫は「吐かせにくい」動物です
猫は、意図的に吐かせることが難しい動物であることが知られています。
その理由として、
- 嘔吐を誘発する薬の効果が出にくい
- 犬と比べて使用できる薬剤の選択肢が限られている
といった点が挙げられます。
ご家庭では、毛づくろいのあとに毛玉を吐く様子を見て、
「猫は簡単に吐ける動物」という印象を持たれている飼い主様もいらっしゃるかもしれません。
しかし、毛玉を吐くことと、医療的に嘔吐を誘発することは全く別です。
実際、犬では催吐の成功率が非常に高いことが報告されていますが、
猫では同じ方法が通用しないことが多いのが現実です。
犬と猫では、使える選択肢が違います
近年、犬では点眼によって嘔吐を誘発できる薬剤が使用できるようになり、
誤食直後の対応における選択肢が広がっています。
この方法は、注射や内服に比べて速やかに効果が現れ、高い成功率が報告されています。
一方で、この点眼による催吐法は猫には適していません。
猫では同様の作用が期待できず、安全性や有効性の面から、犬と同じ方法をそのまま用いることはできません。
猫は、催吐剤の効果が出にくい/使える薬剤が限られるなどの理由で、医療的に「吐かせる」ことが難しい場合があります。実際、犬では高い成功率が報告される一方で(例:臨床研究で97%成功など)、猫ではキシラジンで60%、 メデトミジンで約62%(条件により累積で80%台)といった報告があり、 犬ほど確実ではないことが分かります。
毛づくろいの後に毛玉を吐く姿を見ていると「猫は簡単に吐ける」と感じるかもしれませんが、毛玉の嘔吐と、薬で吐かせることは別です。
このように、同じ「誤食」でも、犬で有効な方法が猫では使えないことがあり、
ここでも「猫は小さな犬ではない」という考え方が重要になります。
吐かせられない、あるいは吐いても出ない場合
異物の種類や形、飲み込んでからの時間によっては、
吐かせること自体が危険であったり、嘔吐しても異物が出てこない場合があります。
その場合には、外科手術による摘出が必要になることもありますが、
条件が合えば、内視鏡を用いて、消化管を切らずに低侵襲で異物を回収する方法を検討します。
昨年多かった猫の誤食異物①
ひも状のもの(糸・毛糸・リボン)
猫の誤食で、特に注意が必要なのがひも状の異物です。
糸や毛糸、リボンなどは猫の狩猟本能を刺激しやすく、遊んでいるうちに少しずつ飲み込んでしまうことがあります。
猫の消化管異物に関する総説では、ひも状の異物は腸に絡みやすく、診断や治療が難しくなることが報告されています。
また、糸や縫い針などの細長い異物は、嘔吐や食欲不振などの症状と関連することが示されています。
口の中や肛門から糸が見えていても、無理に引っ張るのは非常に危険です。
必ず動物病院へご相談ください。
昨年多かった猫の誤食異物②
ビニール・包装材
フードやおやつの袋、パンやお菓子の包装などのビニール類も多くみられました。
食べ物の匂いが残っていると、なめたり噛んだりするうちに飲み込んでしまうことがあります。
ビニールは消化されず、胃や腸に留まり、
嘔吐、食欲低下、元気消失などの原因になることがあります。
昨年多かった猫の誤食異物③
猫のおもちゃの一部
市販のおもちゃでも、羽・ひも・小さな部品が外れて誤食につながることがあります。
特に噛む力が強い猫や、留守番中に遊ばせている場合は注意が必要です。
文献から分かっている大切なこと
複数の研究から、猫の消化管異物は早期に診断・治療を行った方が回復が早く、体への負担も少ないことが分かっています。
一方で、ひも状異物では治療が長引いたり、リスクが高くなる傾向も報告されています。
「もしかして飲み込んだかも」という段階での受診が、とても重要です。
当院では
当院では、猫の異物誤食に対して、
吐かせられるかどうかだけで判断せず、
異物の種類、時間経過、その子の状態を総合的に評価し、
催吐・内視鏡・外科を含めた中から、できるだけ負担の少ない方法を検討しています。
少しでも気になることがあれば、早めにご相談ください。
ご家庭でできる予防
嘔吐や食欲低下が続く場合は早めに受診
糸・毛糸・リボンは猫の手の届かない場所へ
ビニールや包装材はすぐ片付ける
最後に
猫の異物誤食は、完全に防ぐことは難しいものの、
生活環境を整えることでリスクを大きく下げることができます。
「少し様子を見よう」と迷っている間に、症状が進行することもあります。
気になることがあれば、早めに動物病院へご相談ください。
当院では、異物誤食など緊急性のある症例にも対応できるよう、早朝7時から(日曜・祝日は9時〜)完全予約制で診療を行っています。
渋谷区代々木上原駅、代々木公園駅から徒歩でご来院いただける動物病院です。循環器科、内科、外科、皮膚科、眼科をはじめ、幅広い診療に対応しています。
特に循環器・心疾患については治療経験が豊富で、急変時の評価や、他疾患との併発症例にも対応しています。
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心疾患を含め、各種セカンドオピニオンにも対応しております。
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