心臓病の早期発見というと、特別な検査が必要だと思われるかもしれません。
もちろん、検査も必要ですが、実は、ご家庭でできる大切な観察があります。
それが、安静時呼吸数を確認することです。実際には測定して(数えて)みることです。
おうちの子が眠っているとき、あるいは落ち着いて横になっているときに、胸の上下運動を数えてみてください。
胸が上にあがって下に下がる、このセットで1です。
15秒間数えて×4するだけで、1分あたりの呼吸数が分かります。

過去にたくさんの健康犬で確認した報告
安静時呼吸数は一般に
- 15〜30回/分程度とされていますが
実際の大規模研究では
- 多くの健康犬は10〜25回/分程度で推移していることが報告されています。
健康な猫の安静時呼吸数も過去で調べられています。
- 一般的に16〜30回/分とされることが多いです
実際には、
- 多くの健康猫は 20回前後
- 睡眠時は 20回未満になることも多い
と報告されています。
重要なのは「正常値ぴったりかどうか」ではなく、
その子の普段の値を知っておくことです。
この“ベースライン”を知っていると、心疾患の早期変化に気づやすくなります。
安静時の呼吸数
これまで言われてきた目安
一般的に犬の安静時の目安は、
- 呼吸数(RR):15〜30回/分
とされることが多いです。
ただし、この数値は
「病院で短時間測定されたデータ」をもとにしていることが多く、
本当に“自宅で眠っているとき”の値とは少し違う可能性があります。
2025年の大規模研究で分かったこと
2025年に発表された研究では、
700頭以上の犬を対象に、自宅で長期間モニタリングを行い、
安静時HR(心拍数)・RR(呼吸数)を解析しています。
その結果、健康犬の安静時呼吸数は
- 多くが 10〜25回/分程度の範囲
- 睡眠時はさらに低くなる傾向
- 30回/分を継続して超えるケースは少数
であることが示されました。
心拍数も、
- 若齢犬ではやや高め
- 大型犬では低め
- 夜間は日中より低下
といった傾向が確認されています。
つまり、「正常値は1つの数字」ではなく、
体格・年齢・時間帯によって変動する範囲として考えるべき、ということです。
心疾患のある犬ではどうなるのか?
この研究では心疾患群との比較も行われています。
心疾患のある犬では、
- 安静時でも呼吸数が 25〜30回/分以上で推移することが多い
- 健康犬より心拍数がやや高い傾向
がみられました。
特に重要なのは、
「いつもより増えている状態が続くこと」
です。
単発で高いのではなく、普段の値より明らかに増えている状態が持続することが、
症状として大きな意味を持ちます。
実際におうちの子を見ていただく時はどう考えるか
当院では、
- 安静時呼吸数が30回/分を超える日が続く
- 以前より明らかに呼吸が浅く早くなった
- 寝ているときに努力呼吸(1回の呼吸が深いような肩で息している様子)がみられる。
といった変化があれば、検査を検討します。検診の予定を早めて現状を確認します。

重要なのは「絶対値」よりも、
その子のベースラインからの変化になります。
ご家庭でできること
- 寝ているときに胸の上下(上下で1セット)を数える
- 15秒数えて4をかけるする
- 何日か記録してみる
数値を知っておくことで、
「いつもと違う」に気づきやすくなります。
まとめ
最新の大規模研究により、安静時HR・RRは「固定値」ではなく、**体格・年齢・昼夜で変動する“範囲”**として考える必要があることが分かりました。
そして、心疾患ではその値が持続的に上昇する傾向があります。
「普段の値」を知ることは、
症状悪化につながらるおうちの子の変化の早期発見の第一歩になります。
参考文献
Chetboul V et al. Front Vet Sci. 2025.
Payne JR et al.J Feline Med Surg. 2013;16(4):281–290.
当院では循環器診療に力を入れており、
心エコー検査、レントゲン検査、内科治療管理まで行っています。
特に、安静時呼吸数の変化や軽度の心雑音など、
早期の段階での確定診断・評価と介入を大切にしています。
早朝7時から(日曜・祝日は9時〜)完全予約制で診療しており、
夜間に体調を崩したケースや、呼吸数の増加がみられる場合にも対応可能です。
循環器疾患のセカンドオピニオンも承っております。