麻酔をかける

オーナーさんから全身麻酔は怖いです、と言われることがあります。
もっともだと思います。いくら安全に麻酔をかけますと言われても見えていないし知らないことは怖いですよね。

麻酔について少しずつ紹介させていただきます。

動物病院は手術や処置、時には検査で全身麻酔をかける必要がでるため麻酔はとても身近な業務です。もちろん、我々スタッフは麻酔は怖くはありませんがルーチンだからといって決して慣れずに気を引き締め緊張感をもって麻酔をかける必要があります。
そのためにしっかりとした知識を身につけ普段から基本的なチェックを怠らず、万が一思わぬハプニングがあっても対応できるようにトレーニングが必要です。

安全に麻酔を行うために欠かせないチェックの一つに麻酔モニタリングというものがあります。主に麻酔中に行うことですが、前後にもかかって行うものです。

”モニタリング”とはもともと英語ですが、最近は日本語として定着しており、意味は使われる業種によっても変わってくるそうですが、監視、観察などを示し、記録という意味を含むことがあるそうです。

“日本獣医麻酔外科学会”という学会に所属しており、以下のような指針があるので引用させていただきます。

「犬および猫の臨床例に安全な全身麻酔を行うためのモニタリング」

  1. 麻酔管理責任者および麻酔監視係の配置と麻酔記録
  2. 感覚によるモニタリング
  3. 循環のモニタリング
  4. 酸素化のモニタリング
  5. 換気のモニタリング
  6. 体温のモニタリング
  7. 筋弛緩のモニタリング
  8. 麻酔回復期の動物のモニタリング

8つも項目がありますが、我々が麻酔をかける時には当たり前に必須で行っているモニタリング項目です。(全項目の詳細はここでは省きます。)
通常麻酔中は麻酔機を使って上記をモニタリングしていますが、人によるモニタリングは欠かすことができません。
上記の指針の2番にもある人の五感を使った動物のモニタリングです。指標には”監視”ではなく”看視”とかいてあります。
機械が色々なモニタリング項目を測定してくれていてもエラーが出ることや、機械で測り切れないケースもあります。
そのために、我々は動物自体をモニタリングするのと同時に機械のモニタリングも常に行っています。

麻酔をかける時は必要にかられて麻酔をかけます。
ご家族の検査や治療の選択肢を保つためにも、日頃から安定した麻酔モニタリングでリスクを限りなくゼロにするよう努力してそれを少しでもご家族にお伝えできればと思います。
ご不明な点はお気軽にご質問くださいね。


この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。