治療を助ける外用療法

人の皮膚科ではまず外用剤が出されますよね?犬と猫の皮膚科でも、外用剤は重要な治療ツールとなります。
今回は犬と猫の皮膚科における外用療法について、ご紹介していきます。

【外用療法のメリット】

 皮膚は臓器の中でも唯一「直接触れる臓器」であるため、外用療法が使用できます。病変部に直接薬剤を塗布できるため、内服の投与量や期間を減らし副作用を最小限にすることができます。また、皮膚の構造・機能が正常に戻るのを助け、耐性菌にも有効とされる外用剤もあります。

【外用療法に使用される製剤】

局所で使用する外用剤には、

ジェル:乾燥していたり油っぽいところに適しています。湿ったところには向いていません。若干の刺激性があることもあります。獣医領域では多く使われてはいない印象です。

クリーム:油と水の成分を界面活性剤を用いて乳化させたものを基剤としています。皮脂の成分に似ているため皮膚に塗りやすくなじむものが多いです。時に刺激性があるので局所の状態によって、湿った病変には適していないことが多いです。軟膏という名前でもクリームのことがあります。

軟膏:ワセリンやパラフィンなどの油脂系の基剤を使用し、水には溶けません。皮膚を柔らかくしたり保護したり幅広く使うことができます。ただ、犬や猫は毛があるので、ベタベタしやすく動物病院でよく使う外用薬の種類ではありません。

ローション 液体を基材としています。クリームより伸ばしやすいのが特徴です。ベタつきも少ないので広い部位に使えるというメリットがあります。ただ、水の成分が基剤なので、刺激や乾燥が問題になることあります。また、クリームよりは浸透しにくい側面があります。

ワイプワイプは不織布に薬を染み込ませてある拭き取りタイプ外用薬です。簡単に使うことができますが、こちらも毛が多い犬猫では使いやすいとは言えず、たくさの薬の種類はありません。

といった、さまざまな製剤があります。
それぞれの皮膚病変の特徴に合わせて、使用する製剤を使い分けています。

また、全身に病変がある場合は、

シャンプー

ローション

といった製剤を使用することで、広範囲の病変にも対応できます。

 このように、外用療法と言っても、適切な外用剤を見極め、適切に使用することがとても重要です。
皮膚側もどのような外用薬が吸収しやすいなどの使い分けがあります。

ワンちゃん猫ちゃんの皮膚病でお困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。

この記事を書いた人

獣医皮膚科認定医 門岡友子

この度「めぐり動物病院 元代々木」にて皮膚科専門診療を任されることとなりました。
皮膚疾患は動物病院への来院理由でも常にトップ3に入る疾患です。
また、アレルギーや感染症、免疫介在性疾患、腫瘍など、原因が多岐に渡るのも皮膚疾患の特徴です。
そのため、皮膚疾患の原因を一つ一つ丁寧に紐解き適切な診断を行い、ご家族に寄り添った治療を提案してまいります。
ワンちゃんネコちゃんの皮膚疾患にお困りの方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

経歴
・麻布大学獣医学部 卒業
・Vet Derm Tokyo 皮膚科第1期研修医
・ヤマザキ動物看護専門職短期大学 非常勤講師
・日本小動物ケースベースド情報ネットワーク(JCABIN)皮膚科担当講師