猫の便秘

今までに便が出しずらい様子が1度でもあった子は、要注意です。

実は経過によっては今後病気になってしまう可能性があります。

猫を飼っている方は現状、便をする様子に異常がなくても是非覚えておいて欲しい内容です。

便秘の症状とは?
便が硬く便を出す時に時間がかかる。排便体勢をとってしばらくでない。

といった症状です。
重度の便秘の子は、何度もトイレに行って出そうとしますが、便が出ずにトイレでいきんで吐いてしまったり食欲がなくなることもあります。

気をつけたいのは

初期は便秘は症状がわかりにくく、以前から便の回数が少なめだとご家族が便秘が起こっていると気がついていないケースがあります。

多くの猫は 1 ~ 2 回便秘をしてもそれ以上、便秘が再発することはありません。
しかし、一部で進行して顕著な結腸不全(大腸の機能が著しく低下した状態)に至る猫もいます。
これは病気で巨大結腸症(メガコロン)と言われるものになります。


中齢の雄猫はリスクが高いと言われていましたが、海外の大学動物病院のER(救急)で緊急治療され退院した 189 匹の猫の報告では(猫の便秘は自分が救急病院で働いていた時も比較的診る病気の一つでした。)便秘は以下の猫たちで起こるリスクが高いことがわかりました。

  • 高齢で太りすぎの猫
  • 慢性腎臓病
  • 過去に便秘を患った猫

また、血液検査のカルシウム値(イオン化カルシウムレベル)は、便秘の猫で有意に高かったという記載もあります。

また、緊急の治療の一つで浣腸をすることがありますが、腹部の触診で痛みを感じた猫は、浣腸後に排便する可能性が低かったという結果もありました。

巨大結腸症の根本の原因はわかってないものの、若い時に事故にあったりして骨盤狭窄や神経損傷が便秘の原因なることもあります。また、罹患した猫のほとんどでは、根底にある病因には結腸平滑筋の機能不全が関与しているようです。
それを悪化させる要因として運動不足、肥満、食事の内容が言われています。

この機能不全が一次性の異常であるのか、それとも二次的(長年の便秘や結腸の膨満に起因する)異常であるのかは多くはわかりません。

軽度から中等度の便秘を患う猫の多くは内科治療(例、処方食や食物繊維の補給、皮膚軟化剤または高浸透圧性下剤、結腸運動促進剤)に反応しうまく治療ができることが多いです。
処方食もいいものが出ているので、とても便利です。食べてくれない子も比較的飲ませやすい内服薬があります。

実際に、結腸運動促進剤を早期に使用開始するとすると、症状がある多くの猫で便秘や拡張した巨大結腸の進行を予防できる可能性があります。ただ、中等度または繰り返す便秘から巨大結腸へと進行するにつれ、内科療法の効果がなくなり、抵抗性になる場合があります。

重度の便秘の猫は最終的に結腸切除術が必要になります。

猫の結腸切除後の予後は一般に良好ですが、場合によっては軽度から中等度の下痢が術後 4 ~ 6 週間続くことがあり管理が大変な場合もあります。

とにかく早期発見が肝になります。

正常の便の回数

便は1日1回以上が正常。
2日に1回だと少ないので、動物病院で身体検査をします。腸自体に便が出づらい構造上の原因がないかを確認します。その他に考えられる原因はないのか、便や身体の状態から原因を推察します。結果的に便秘あるいは便秘傾向が疑われる場合は何かしら対策が必要です。また、悪化していかないか用心深い観察が大切です。動物病院と連携をとっていきましょう。

繰り返しますが悪化してからだと治療が難しくなります。


また、便の回数は多くても異常の可能性があります。1日3回以上する場合もご相談ください。

早期発見が肝になる便秘。普段から排泄の回数は気にしてあげてくださいね。

ご不明点や気になることがあればご相談くださいね。

参考文献:

Sarah E Benjamin et al.J Feline Med Surg. 2020 Feb;22(2)

R J Washabau et al.Vet Clin North Am Small Anim Pract. 1999 Mar;29(2):589-603.

この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。