誤食シリーズ 茶葉(ティーパック)

4月は誤食が多いシーズンとして知られており、国内外で異物誤食や中毒の患者さんの数が多い時期とされます。

最近多い誤食物の一つにサプリメントやお茶などの健康食品があります。

お茶はの誤食とは、人がお茶を飲むための茶葉の誤食です。
ティーパックをいたずらして中身を食べてしまったケースが多いです。

お茶の成分でもカフェインは中毒物として知られており、犬猫に危険なことは有名ですが、ノンカフェインのお茶はどうでしょうか。

ノンカフェインのお茶の成分の多くはハーブが使われています。カフェインが入っていなくても他の成分が中毒を起こすことがあります。

ハーブは漢方にも使われますがハーブティーは通常は薬品ではなく食品として位置付けられ、規制を受けていないものにあります。

犬猫でハーブにより中毒を起こした報告ぶいうて代表例に以下のようなものがあります。

カモミール

中毒物質:カモミールには、ビサボロール、カマズレン、アンテミン酸、タンニン酸の組み合わせによって形成される揮発性オイルが含まれています。
症状:嘔吐、運動失調、その他(唾液分泌過多、下痢、食欲不振、接触性皮膚炎、鼻出血、出血傾向)
少量摂取では問題ないことが多いです。駆虫薬、鎮静薬として使用でき、鎮痙作用の効果が言われており、虫除けにも使われることがあるようです。

このように、香りを使うくらいでは有益な効能もありますが、口から摂取した場合に中毒量がはっきりしていないため、お茶を誤食した時は、できる限り体から取り除いた方が良いと考えられます。

ササフラス(別名 シナモンウッド、ゴールデンエルム)

クスノキ科の植物

中毒物質:サフロール、フェノール(猫で感受性高い)
症状:散瞳、嘔吐、悪心、神経や心臓の虚脱症状。肝臓毒性

利尿、発汗作用があり、アロマオイルやお茶に使用されています。犬にも中毒を起こしますが、猫では特にティーバッグ1つで致命的となることが知られています。

すずらん

中毒物質:刺激性サポニン、ジギタリス様グリコシド
症状:悪心・嘔吐・不整脈・下痢
サポニンは色々な植物に含まれております。すべてが中毒を起こすわけではありませんが、多くが注意が必要な中毒物になります。

ゼラニウム

中毒物質:リナロールとゲラニオール
症状:重度の皮膚炎、嘔吐、低体温、徐脈や不整脈

カモミール、ラベンダー 、ローズマリーと並んで犬へのリラックス効果で香りが許容されるとも言われる反面、口からの接種は注意が必要です。

桔梗(ききょう)

中毒物質:サポニン
症状:下痢、嘔吐、溶血性貧血
サポニンは多種のサポニンがありますが、桔梗の根のサポニンは犬に中毒を起こすとされております。

備考 サポニンについて 

少し脱線しますが、サポニンという成分は色々な種類があり、中毒を起こすこともあれば、ドッグフードに少量含まれる種類もあります。整腸作用があるとも言われています。毒性が言われているのが、アロエベラ、イングリッシュアイビーなどです。他のほとんどの種類のアイビーには含まれません。アスパラガス、や多くのシダには危険なサポニンが含まれています。多くのヒイラギなどのいくつかの種類にも危険なサポニンが含まれており、注意が必要とされます。

その他の代表的なノンカフェインティーでは、ルイボスティーやミントティーは問題ないとされています。また、ジャスミンは種類によって中毒を起こすものと無害なものに分かれます。

誤食ではなく、オーナー様自らおうちの子に日常的にお茶を与えるケースもあります。
おうちの子に水ではなくお茶をあげたくなる要因として、健康を維持したいから、水分をとって欲しいからなどの理由が多くあります。お茶からミネラルをとらせたいというご返答をいただくことがあります。もしミネラルをとるためであれば、ミネラルが豊富なお茶は控えた方が良いという見解になります。なぜならば、犬猫ではミネラルが泌尿器の病気を招くこともあり注意が必要だからです。そういった点ではミネラルが多いミネラル水より水道水が一番安全です。浄水器をお使いいただき、通常のお水を与えることをお勧めいたいます。

お茶に含まれる中毒成分はどのくらい含有しているかわからないところが危険です。また、茶葉という性質から飲み込むと水分によって成分が溶け出し、すでに成分が吸収されてしまっているおそれがあるため、催吐(吐かせる)処置が間に合わないことがあります。また空腹のところに茶葉を飲み込んだ場合は、小さな茶葉を全部催吐処置で取り出すのは困難です。だからといって、誤食後にすぐにフードをあげないようにしてください。

誤食してしまった場合

  • 特に様子に変化がなくとも、水や食べ物を与えずに、すぐにご相談いただく。
  • 誤食したそのものの残骸をお持ちいただく。
  • 成分がわかるものも教えていただく。

    以上の点に気をつけていただくようお願いいたします。

参考:伴侶動物のための救急医療 


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この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。