急性下痢 2

急性下痢とは一般的に2週間以内で治る下痢のことを示します。
多くは1週間で治ることが多いかと思います。
急性下痢は犬では多く、猫では発生が少ないとされていますが、日常の診療では下痢を訴える猫さんも同様に来院されます。

【原因

犬や猫の急性下痢には多くの原因が考えられますが、多くの場合原因がわからずに自然に、あるいは対症療法によって治ります。急性なのか慢性なのかは経過をみて初めてわかることで最初から急性と判断できるわけではありません。
初めて下痢をした子でも経過によって慢性下痢と診断されることもあります。

【内部寄生虫

内部寄生虫は主に若い子でリスクになるとされています。症状がない子と下痢をしている子を比較すると下痢をしている子の方が寄生虫が多いわけではないということがわかっています。寄生虫がいても症状のない子はたくさんいるということです。ただ、過去の報告で、消化器症状のある犬はジアルジアなどの腸内寄生虫の有病率が高いことがわかっています。若齢の子は寄生虫による症状が出やすいこともわかっています。この場合の若齢期は特に離乳後から生後6ヶ月齢くらいまでの子です。

【食事性】

急性下痢の原因の中で最も多いとされています。

  • 人用の調理した食べ物を与えること
  • 誤食
  • 食事の変更
  • 過食(いわゆる食べ過ぎ、与えすぎ)

    これらがリスクであるという報告があります。

細菌性腸炎、ウイルス性腸炎

細菌ではカンピロバクター、クロストリジウム、サルモネラなどがあげられますが、下痢をしている場合と無症状の場合で菌の数に変わりがないというデータもあり、細菌が主原因であるかは不明であるようです。また、ウイルス性腸炎はは若齢の子でよく感染があるとされます。原因はパルボウイルスやジステンパーウイルスによるものが良く知られています。

出血性胃腸炎(HGE)

小型犬に好発する原因不明の出血をともなう下痢の総称です。猫では報告されていません。原因は食事、食品成分、食中毒の原因となるウェルシュ菌から出る毒(CPE)、クロストリジウムなどがいわれています。
どのような症状かというと、顕著な血液濃縮を伴う血様下痢および嘔吐の急性発症が特徴です。いわゆる脱水所見となります。点滴などの対症療法で24 ~ 48 時間以内に改善し、通常は抗菌療法が行われますが適切に治療しない場合に死亡にまで至るリスクがあるとされています。

その他

異物の誤食、消化管以外の問題(急性肝疾患・急性膵炎・レプトスピラ感染症を含む急性腎障害)、薬剤(抗生剤・一部の心臓薬・抗がん剤)など

診断

急性下痢で一番大事なことは自然に治まる程度なのか​、それとも実は背景に急性下痢を起こす重篤な問題があるのか​​を判断することになります。この区別は難しいものの、経過、環境や食事の詳細な聴取が欠かせず、詳細に身体検査を行うことや検査をするかどうかの判断をすることで区別をしていきます。

便検査は一般的に行います。
細菌を顕微鏡でみても診断に至らないことが多いですが、原虫類(ジアルジア )は顕微鏡で発見され症状があれば治療対象となります。大腸粘膜の細胞診は通常は慢性下痢の際に行います。

身体検査の結果、リスク判定のため血液検査、各種画像検査を実施しすぐに治るような原因以外の原因がないか鑑別する場合もあります。症状や身体検査、経過で判断いたします。

対症療法により、通常は 1 ~ 3 日で症状が軽減されます。下痢が続く場合、または嘔吐や食欲不振などの他の徴候が発現または悪化する場合は、より重度な異常がある可能性があります。追加の検査と治療が必要になります.,

急性の下痢で来院されるか迷うケースはあると思います。過去の大規模な下痢の子のデータでも1日は様子をみるという方が多かったとありました。
どのようなケースでは来院したほうがよいのか、

  • 脱水
  • 腹痛
  • 元気消失
  • 下血または血便
  • 頻繁な嘔吐
  • 全身疾患の兆候、例えば:
    • お腹が張っている
    • 目脂や鼻汁がある
    • 尿がいつもより極端に少ない
    • 粘膜が薄い、黄色い
    • 発熱していそう

迷う場合は病院にご連絡いただければと思います。

参考文献

Grellet A, et al. Prev Vet Med. 2014

Batchelor DJ, et al.Transbound Emerg Dis. 2008

Stavisky J, et al. Prev Vet Med. 2011

当院は早朝7時から(日曜・祝日は9時〜)完全予約制で診療を行なっている渋谷区代々木上原、代々木公園に近い動物病院です。
夜間に体調を崩して朝になっても良くなっていなくてご心配な場合や、朝からお仕事やご用事がある場合など、
早朝の診療をお勧めいたします。
セカンドオピニオンにも対応しております。

この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。