肺水腫

肺水腫とは

肺水腫は、にさまざまな原因で液体が溜まった状態です。 

肺水腫は、肺胞と呼ばれる肺の中の小さな空気の袋に通常は空気が含まれているところ空気ではなく液体で満たされることで発生します。肺水腫の原因によって肺の中や周囲に液体がゆっくりと時間をかけて溜まることもあれば、急速に溜まることもあります。

【肺水腫の原因】

犬の肺水腫の原因には、心原性肺水腫と非心臓原性肺水腫の 2 つの異なるグループがあります。
心原性とは心臓の問題が原因となって起こる肺水腫で非心原性肺水腫とはそれ以外の肺水腫になります。

心原性肺水腫

心原性肺水腫とは、犬の心臓に何らかの疾患があり、肺に水が溜まる状態です。心原性肺水腫の原因には主に以下のようなものがあります。

  • 心臓の壁(心筋)の異常 
    例 拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、不整脈原性右室心筋症など
  • 心臓の中の弁の機能不全(弁膜症、先天性も後天性もあり)
    例 僧帽弁閉鎖不全症、僧帽弁狭窄
  • 不整脈 
    例 頻脈性不整脈(急性発症のことが多い)
  • その他:感染症、心外膜疾患、高心拍出心不全、甲状腺機能亢進症、重度貧血、高ナトリウム食など

    肺水腫の原因として犬では僧帽弁閉鎖不全症が原因のものが最多で、猫は心筋症が原因のものが最多です。

非心臓性肺水腫

非心臓性肺水腫を引き起こす可能性のある原因は、以下のとおりです。

  • 低タンパク血症(血液中のタンパク質が少ない)                   
  • 気道閉塞
  • 腫瘍性疾患など
  • 感電
  • 煙の吸入
  • 水没
  • ヘビ毒などの毒素
  • 肺炎
  • 貧血
  • フィラリア

【症状】

肺水腫の症状は、病気の根本的な原因によって異なりますが、最もよく見られる症状は次のとおりです。

  • 咳(犬、猫は肺水腫による咳は通常認められない)
  • 呼吸困難、呼吸が早い(パンティングとは別)、肩で息する
  • 息を吸うときのパチパチという音がする
  • 喘鳴
  • 元気がない
  • 粘膜・舌の色が薄い
  • 眠れない、横にならない

【診断】

身体検査は速やかに要所を確認する必要があります。
聴診で気道や肺に液体が溜まっている音が聴こえるのか、粘膜色はどうか。
首の血管が腫れていないか(頸静脈怒張)などを速やかに確認します。また、オーナーへの状況の確認を同時に行い口の周りの火傷(電気コードを噛んだことによる)など、感電の証拠がないか、気道の閉塞がないか確認します。

多くの場合、胸部X線検査が行われます。心原性肺水腫の場合、X線検査によって肺に溜まった液体の量を確認できるほか、閉塞の原因となる異物や心疾患の徴候を確認できます。
また、近年は肺超音波検査(肺エコー)にてより早期に肺水腫を確認することが一般的になってきました。ありそうかなさそうなのかの定性検査に適しており、特に動物を横に寝かせたりする必要がなく素早くチェックできるのが利点です。

場合によっては、気道内の液体を検査することで、タンパク質レベルの高低を判断するのに役立つことがあります。タンパク質レベルが高い場合は、非心臓性の原因による体液蓄積を示唆し、タンパク質レベルが低い場合は、心原性肺水腫を示唆するとも言われています。

【治療】

心臓性肺水腫の治療

心臓病が原因で肺に水が溜まっている場合、通常は肺の水を除去するために利尿薬の投与と、酸素療法を行い集中管理をします。心臓病は一般的に慢性疾患であるため、治療によって一旦落ち着いても肺水腫は再発する可能性があります。自宅ではオーナー様に肺に水が溜まっている徴候(呼吸数の増加など*)がないか注意深く観察してもらい、症状が悪化する傾向があれば早期に治療を調整する必要があります。長期的な治療として、心臓治療薬に加え処方食が推奨される場合があります。

非心臓性肺水腫の治療

非心臓性肺水腫の治療に関しては、根本的な原因と症状の重症度に応じて治療法が異なります。
気道閉塞があった場合は、鎮静させて閉塞を取り除く治療をしますが、多くの場合は手術が必要になります。その他の原因による非心臓性肺水腫は、内科療法(抗生物質、点滴、コロイド剤、利尿薬、抗炎症薬)などで治療するのが一般的です。


肺水腫はその診断から原因の追求までを速やかに行うことで治療の成功につながります。
初期のご自宅での初期の症状はなにか落ち着かない様子というだけだったと伺うこともありました。
呼吸が早い、咳、元気がないなど症状も多岐にわたります。元気はないけど食欲だけはあったという子もいました。
気になる症状がございましたら早めにご相談くださいね。

*安静時呼吸回数の数え方
寝ている時やリラックスしている時の胸の動きを吸って吐いてで1セットとして数える。15秒数えて4を掛けると1分間の呼吸回数に。普段からたまに見てお家の子の回数をチェックしましょう。
正常は10-30回/分くらいで40回/分以上が異常値になります。


当院は早朝7時から(日曜・祝日は9時〜)完全予約制で診療を行なっている渋谷区代々木上原駅、代々木公園駅から徒歩でご来院いただける動物病院です。循環器科、内科、外科、皮膚科、眼科に強い病院です。

早朝から対応をご希望されるケース
・夜間に体調を崩して朝になっても安定しない。
・日中お仕事やご用事がある。
・気温が最も高い時間帯より前に診察を終わらせたい。
・早期の内視鏡検査や治療をご希望。
セカンドオピニオンにも対応しております
。(これまでの検査結果や治療内容をお持ちください。)

この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。