脱水

のチェック
診察では必ず確認します。
脱水がない=”水和状態が適正”といいます。
犬でも猫でも同様です。

主訴から脱水を起こす可能性があるのか、実際にどのくらい脱水しているのか、オーナーの訴えと身体の状態が一致しているのかというのを診ることによって必要な検査や治療を考えます。

脱水を起こす症状や疾患は、下痢や嘔吐などの消化器症状、胃腸に多量に液体が溜まるような状況(胃拡張や胃捻転、消化管異物など)、糖尿病、腎臓病、尿崩症、ホルモン性疾患、重度の外傷や火傷、薬剤(利尿剤など)、飲水できない様々な疾患(神経疾患など)と多種多様にわたります。

また、オーナーが特に問題を感じていない場合も身体検査で水和状態を確認するのは健康状態を把握するために欠かせません。病気の初期だと症状に気が付きずらく発見が遅れる病気を動物病院ですこしでも早く見つけてあげるためです。

例えば、初期の腎臓病はたくさんの尿がでて喉が渇くのでたくさんの水を飲みますが、飲む量が追いつかずに軽く脱水を起こしたりします。
また、食事をとっていてるように見えても何らかの原因でその量が減ってきていると脱水を起こす場合もあります。体重や筋肉量が適正なのかという点と一緒に水和状態も見ることによりその子の些細な変化に気が付けます。

【獣医師が行う水和の確認方法】

1、口の粘膜の湿り具合 乾燥で脱水を予測します。

2、皮膚の張り 皮膚テント試験とか皮膚つまみテストといって首の後ろの皮膚を獣医師がつまんでいるのを見たこともある方もいらっしゃるかと思います。つまんだ皮膚がテントのような形になったあとすぐに戻れば正常。テントの状態のままなら脱水と評価します。人だと前腕の皮膚の張り(トルゴール、ツルゴール)でみるとされますね。

引用:Today’s Veterinary Practice 

3、心拍数の高さ 診察では正常でも緊張でドキドキすると心拍数が上がり、徐々に下がって正常に近くなります。しかし、脱水していると心拍数が高く治療しなければ高いまま持続します。

その他にも脈の強さや眼の潤いなどがあります。

ここで注意が必要なのは、身体検査は主観的な評価なので、惑わされることもあります。

1は運動後に呼吸があがり口を開けてハアハアと呼吸する、あるいは、極度の緊張で口の中だけ乾燥する。これらを全身の脱水と勘違いしてしまうこともあります。2のテストでは、高齢になると皮膚の弾力が低下して戻りが悪く脱水のように見えることもあります。肥満の子は皮膚がつまめず脱水していてもそれが隠れてしまいます。

このような矛盾を確認するため、個体差を正しく評価するため、時には血液検査や画像検査を行い総合評価する必要はあります。
脱水をしっかり評価すると治療にもスムーズにつながります。

ただ、その入りとして身体検査で水和状態をみるのはとても大切なのです。

お家でも脱水チェックに役立てられるとすると、皮膚の張り口の乾き具合は見れると思います。
普段から見ることでうちの子の標準が把握でき、脱水状態に早めに気が付けるかもしれません。

気になることがあればお問い合わせくださいね。


参考:performing the Small Animal Physical Examination. Ryane E. Englar

この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。