腎不全

罹患率が多い病気です。
犬の死因の3番目、猫の死因の2番目とされています。1番目はどちらも腫瘍で、犬は心臓病が2番目になります。

腎不全は目に見えて具合が悪い症状が出た時には、手遅れになっているほど進行しないと症状に気がつきにくいのですが、どんな症状が出るのか知っておいていただければ早期治療ができて救命率が上がるかと思います。

腎不全には急性と慢性があります。慢性は人では3ヶ月続くものと定義がありますが、犬猫では明確ではありません。ただ、何度か検査して持続的に腎臓が悪いことがわかれば慢性とになります。いずれも血液検査、尿検査、画像検査で診断できます。血圧やその他の病気の除外や病期の推定をし治療計画を立てます。

急性腎不全
の原因は多種多様にあります。腎臓自体に原因があることもあれば、尿が出ていく通り道である膀胱、尿道、尿管などの泌尿器に問題があって腎不全になるケース(腎後性)、あるいは、脱水や低血圧などで全身の血液の流れが悪く、腎臓の血流も同様に悪くなり腎不全が起こるケースがあります(腎前性)。海外では腎炎や中毒、薬物が原因の腎不全は多いそうです。日本の動物病院の診療では尿結石による尿道閉塞が多い印象です。急性腎不全の鍵は早期発見です。早期に治療すれば元に戻る見込みがあります。
急性の腎不全の症状は原因により異なりますが、尿が極端減る乏尿、尿毒症**の症状の食欲不振元気がない、嘔吐や下痢で腎不全で特有の症状ではありません。乏尿は比較的気が付きやすい症状ですが、多頭飼育の方は気が付きにくいので注意が必要です。

慢性腎不全の根本原因の特定は難しいとされています。前述した急性腎不全から慢性腎不全に移行するケースもありますが、多くの場合、気がついた時には慢性腎不全だったということが多くあります。慢性とは、腎臓の機能が低下あるいはなくなってしまって完全には戻らない状態です。何度か血液検査でクレアチニン や尿素窒素、尿検査で尿が薄いこと、画像検査で腎臓の構造がおかしいことなどで診断されます。

どのような症状に気を付けるべきでしょうか。

一番最初に起こるのが多飲多尿です。尿の量が増え、水を飲む量が増えます。
犬のオーナーだと散歩での尿が多いと気がつくことがあるのですが、猫は気が付きにくいことも多いとされています。また、尿が多いと回数も増えることがあり、尿をいつもと違う場所でするいわゆる尿の失敗をしてしまう子がいます。お漏らしや失禁と勘違いしてしまい、実はたくさん水を飲んで大量の尿をする多飲多尿だったということもあります。犬と猫では色々違いますが、猫は尿が濃いのが普通なので1度でも尿検査で薄い尿だった場合、かなりしっかり経過を診た方がよいです。

食欲不振
食欲ゼロ、全く食べない状態になった時にはだいぶ進行しています。初期だと意外に見逃されてしまう症状です。高齢で食が細くなってしまったのかなと様子を見てしまう、普段からムラ食いの子だと好き嫌いをしてもいつもの感じかなと気がつきにくいのですが、食事の総量が大事なので注意しましょうある日突然食べなくなるというよりは徐々に食事量が減ります。

胃腸障害も起こします。
猫より犬で多いとされる腎不全からくる嘔吐は尿毒症物質による刺激で胃酸が多く出てしまって胃潰瘍を起こすのも要因とされています。

体重減少
食欲不振でカロリーがただ取れないだけではなく、体の中で異化作用*が働き太れなくなるのです。


他の病気でも出得る症状が多いですね。

体重の変化や尿の状態は健康のバロメーターになります。
少しの変化が体の中では大きな変化である可能性あります。
さらに、症状が出る前に尿検査などで早期発見ができることもあります。健康診断を受けるようにしましょう。

気になる症状はご相談くださいね。

*尿毒症:体で不要になった老廃物や毒素が尿中に出ずに体内に蓄積してしまう状態 腎臓の機能は老廃物や毒素を出すので、腎臓の機能があるところまで落ちると尿毒症になります。
**代謝のことで筋肉を分解してしまいます。

参考text :Canine and Feline Nephrology and Urology Second Edition • 2011




この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。