中毒 誤飲・誤食 猫

有害(有毒)物質を摂取してしまった時におこる中毒。人にとっては毒でないものも猫にとっては毒のこともあります。

一般的に猫は味の好みがうるさいとされ、オーナー様も「うちの子はおかしなものを食べない」とおっしゃる方もいらっしゃるように、犬よりは誤飲・誤食が少ないようです。実際に電話相談を受けているペット保険のデータだと犬と猫の誤飲・誤食の相談の割合(中毒のみならず誤食全体)は8割強:2割弱だそうです。(PS保険調べ)

一方で飼育頭数は犬の方が多いのもありますし、上の結果はけっして猫は誤食・誤飲が少いというわけではない結果だと思います。好奇心が高い猫は遊びながら食べてしてしまうことが十分にあるのです。

また、猫の特徴として肝臓の代謝酵素が少ない特徴があり薬物や化学物質で代謝(薬を体から出すこと)できないものがあります。毛をよくグルーミングすることで毛についた有毒物質も摂取しがちな点もリスクとして挙げられています。

アメリカのミネアポリスに本拠を置く24時間365日全国的に動物毒管理を行っているPet Poison Helplineのデータによると、猫中毒のトップ5(2020年)は次のとおりです。

  • ユリ(テッポウユリ、オニユリ、スターゲイザーリリーなどのユリ属、カンゾウなどのヘメロカリス属)
  • チョコレート
  • ビタミンDの過剰摂取
  • ネギ類(タマネギ、ニンニク、チャイブ、ネギなど)
  • ヒトまたは動物用の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)


ユリの誤食は日本でも良くあります。一般的に知られるようになってきていますが、猫を飼っていてもユリを飾ってしまう方がいらっしゃいます。ユリは花粉、葉、花、茎、根の全ての部分ゆりを生けていた水にまで猫にとって毒性があるとされます。お家にかざらないようにしましょう。主な症状嘔吐や下痢などの消化器症状や急性腎不全が起こり、死に至るケースも多く報告されています。すぐに症状が出ることもあれば、遅れて出ることもあると報告されています。
ちなみにピースユリやオランダカイウユリなどのユリとなっていますが、本当のユリではなく、猫に腎不全を引き起こすことはありません。代わりに、これらの植物にはシュウ酸塩の結晶が含まれており、口、舌、喉、食道の炎症などの軽い症状を引き起こす可能性があります。



チョコレートは中毒物質としてとても有名になりました。
症状としてはチョコの成分であるテオブロミンが引き起こす興奮の症状で震えや発作を引き起こすだけでなく、活動亢進や心拍数や血圧の変化を引き起こす可能性があります。心悸亢進と言われるものです。また、チョコレートを含有した食品には脂肪や糖分が多く含まれており、嘔吐や下痢を引き起こす可能性があります。チョコレートを食べた子の胃を内視鏡で見ながら洗浄した時は胃壁に付着してなかなか除去できず苦労したことがあります。胃から流れでない場合は持続的に症状出る恐れがあり、症状が持続すると脱水症状も引き起こす可能性があります。
リスク回避の高いところや狭いところに入れる猫から遠ざけるためには開けられないところにしっかりしまうことが大事です。また、お子さんがいらっしゃるご家庭での誤食が多い印象です。中学生から大学生と自分でおやつをある程度管理できて自分の部屋になんとなく置いておいて出かけていたら猫が入ってしまい、散らかりかじった痕跡があって気がついたというケースです。日頃からお子さんたちにも誤食の危険について教えておくといいでしょう。

ビタミンDはサプリのイメージですが、総合栄養食をうたったキャットフードで報告があります。日本では1990年代に多かったようですが、海外では今も報告があります。猫は人と違って日光浴でビタミンDを合成できないので食品にある程度の添加が必要ですが、それを意識しすぎて基準値以上の量が入っていた事例があるそうです。
ビタミンDの中毒の症状は元気がなくなる症状でえす。ひどいと血液中のカルシウムが上昇し、身体の中で石灰化(腎臓、心臓、肺が多い)がおこる、慢性腎不全になる危険があります。その他のビタミンDの原因として、サプリの添加や人間のサプリ誤飲、皮膚科の外用薬の誤飲誤食、殺鼠剤の誤飲誤食もあります。

AAFCO(アメリカ飼料検査官協会)が定めたフードのビタミンDの基準量
乾燥重量1kg中に280~30,080 IU
フード100kcal中に7 ~752 IU

タマネギ、ニンニク、チャイブ、エシャロット、リーキ、ネギ全般は中毒物質のネギ科のくくりです。これらの植物を摂取すると、赤血球が破壊され、貧血が起こり死に至ることも。また腹痛、嘔吐、下痢を引き起こす可能性があります。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は解熱鎮痛剤で、人では一般的な薬です。猫は、特に犬や人間と比べて、この薬物の代謝ができません。残念ながら、これらの薬は猫にとって最も致死性の高い薬の一つです。一部の獣医用 NSAID であっても、推奨量を超えて投与したり、長期間投与したりすると、猫に有毒となる可能性があります。NSAID を有毒な用量で摂取すると腎不全や胃潰瘍を引き起こす可能性があります。NSAID ではありませんが、人間に使用されるもう 1 つの一般的な鎮痛剤であるアセトアミノフェン は、赤血球に損傷を与えるため、たった 1 錠でも猫に致命的になる可能性があります。治療しないと、重度の貧血(赤血球数の低下)、呼吸困難顔の腫れ、肝不全などを引き起こす可能性があります。

人NSAIDsの例
病院で処方:アスピリン(バファリン®など)/ロキソプロフェン(ロキソニン®など)/ジクロフェナク(ボルタレン®など)/インドメタシン(インダシン®など)/メフェナム酸(ポンタール®など)/スルピリン(メチロン®など)/®など)/エテンザミド(ノーシン®,セデス®など)/イソプロピルアンチピリン(セデス・ハイ®など)


アセトアミノフェンの例
病院処方(タイレノール®、小児用バファリン®など多くの市販薬)アセトアミノフェン(アンヒバ®、カロナール®など)

市販薬:アスピリン(バファリンA®など)/イブプロフェン(イブ)


猫の誤飲・誤食のトップ10(中毒物質に限らず)日本のペット保険会社調べ

  1. ヒモ状のもの
  2. ビニール類
  3. ネギ類
  4. ゴム
  5. 人間の薬
  6. イヤフォン
  7. チョコレート類
  8. コード類
  9. プラスチック系
  10. ペットのおもちゃ
    PS保険HPより

圧倒的に食べ物以外が多く遊んで楽しい長いもの、転がして噛み噛みできるゴム状のものが多いですね。

危険にさらさないために・・・
繰り返しになりますが、薬や食べ物をしっかり片付ける。カバンに入れているものも漁られることがありますので、対策してください。コードのような長いものは普段から観察し、かじっていないかチェックします。特に幼猫にとっては全てが遊び同部おもちゃは人がいる時に遊ばせ、遊びが終わったらしまう。お子さんを含めすべてのご家族に誤食・誤飲の危険性を普段から伝えておく。

食べてしまったら・・・
症状が出る前に行動する。症状が出てからでは遅く予防的な対応が必要になります。誤飲・誤食したものの一部や同じものがあればそれを一緒に持って動物病院へ行きましょう。有害物質が毛についてしまった時はそれ以上なめてしまうのを防ぐために多めのタオルで顔以外の体を巻いてキャリーに入れましょう。

お困りの時はまず動物病院に相談してくださいね。

次回は犬の誤飲・誤食

この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。