膀胱炎 犬

  • 何度も尿をしようとしているが少ししか出ない
  • シートにした尿の最後赤い

こんな症状で病院に来院されることが多いです。お散歩での尿の回数が増えて気がつかれる方も。

血が混ざるのは多くの場合血尿・膿尿で、何度も尿をするのは頻尿という症状に該当します。(尿道閉塞や多飲多尿など別の症状の可能性もあります)
頻尿は残尿感から来る症状で尿をしたばかりなのに、まだ残っている感じがするという症状です。
実際に膀胱の中に尿が残っている時もあれば、残っていない時もあります。
痛みを伴う場合もあります。

では、膀胱炎の原因は何があるでしょうか。

【原因】
猫は特発性膀胱炎が原因で最多になりますが(前回ご紹介)、犬の膀胱炎の原因で最も多いのは細菌性膀胱炎です。
上記の症状で来院されて発覚することが多いですが、膀胱内に細菌がいても必ずしも症状が出るわけでは無く健康診断で細菌や膿尿が見つかることもあります。

膀胱炎自体は緊急性はそこまで高くないものの、不快で痛みを伴うこともありますし、放置すると全身への影響もでるため軽視できません

細菌が存在するこの膀胱炎はいろいろな種類に分けられます。
症状が無く偶発的に細菌が見つかった場合は・・・
炎症があるかどうか(膿尿)、基礎疾患(持病)に免疫が低下するような病気があるかどうかで治療するかどうかを決定します。

症状があって尿中に菌がいる場合は単純性細菌性膀胱炎という分類になります。

これが年に3回以上膀胱炎を繰り返した場合は複雑性膀胱炎という分類にはいります。基礎疾患に膀胱炎を繰り返す異常がないか探します。基礎疾患には尿路のどこかに異常があるケース(結石や腫瘍、雄なら前立腺の疾患)、内分泌疾患(クッシング、糖尿病、甲状腺機能低下症)、排尿経路の構造上の異常や筋肉神経の異常(外陰部低形成、異所性尿管、尿道括約筋不全など)がある場合などが知られています。

【診断】
いずれも診断は尿検査尿培養(細菌の有無や効果がある抗生剤を調べる)を行いますが、膀胱炎を繰り返している場合は複雑性膀胱炎にあたるため、繰り返す原因を探ることになります。 
尿検査などに加え血液検査や画像検査が必要になります。

【治療】
単純性細菌性膀胱炎の場合は決められた抗生剤を1週間(状況によって2週間)投与し、症状の改善を治癒とみなします。治療開始と同時に尿培養ができるとより安心です。
複雑性膀胱炎は通常1−2ヶ月治療経過を見る期間が必要で、しっかり治癒できたことを確認するため尿培養を2回以上は実施します。

最初は単純性細菌性膀胱炎だった子が実は複雑性膀胱炎だったと発覚することもあります。
再発を繰り返し多数の抗生剤を服用し、耐性菌(一定の抗生剤が効かなくなった菌)が出て治療が難しくなった患者様がセカンドオピニオンにいらしたことがありましたが、その後の治療は相当大変になります。避けられずに使用する抗生剤ですが、できるだけ必要な種類を必要な分使用するようにしたいです。そのための培養検査は非常に有用です。

症状をしっかり観察して気になることは早期に相談し、適切な診断を受けしっかり治してあげたいですね。
気になる症状があれば相談してくださいね。

参考:Weese, J. Scott et al. 2011. Veterinary Medicine International 2011: 1–9.(ガイドライン )





この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。