日頃の診療で犬も猫も歯周病の患者さんは多く、症状がない子から痛みが出てしまっている子まで様々です。
歯周病が進行してしまった時に、基礎疾患の治療中だったり高齢になっている子たちに麻酔をかけて治療をすることに関して、悩まれる方もいらっしゃると思います。
顔が腫れてしまった、皮膚が破れて膿がでている、食欲がなくなったと受診され、歯周病が原因だったと判明するケースがあります。
症状が出る前から歯周病には気がついていたけど麻酔をかけて歯を治療するのが心配で放置していたら症状が出てしまって緊急で処置をせざるを得なくなったということがよくあります。
そもそも麻酔が心配で様子をみていたものの、状態が悪くなってから麻酔をかけるのでは、元々ある基礎疾患に影響したり菌のせいで内臓に影響が悪くなってしまったり、通院回数が増えたりとより大変になってしまうことがあります。
ケース1:高齢で食が細くて痩せてきていた猫さんですが、普段は元気でした。歯に歯周病はありましたが麻酔下でクリーニングすべきか悩むところで様子を見ていたそうです。
顔が腫れてしまっており、熱が出ていました。一晩で腫れ上がった急性の経過から腫瘍性疾患等よりは歯周病からくる根尖膿瘍が疑わしいと思われました。触ろうとするとひどく痛がります。
レントゲン検査ではやはり腫瘍などではなく歯周病が疑わしいという結論となり、麻酔をかけて状態把握して治療をすることになりました。
口の状態をチェックしたところ、左上顎の歯が膿んでおり、押すと膿が大量に出てきました。抜歯をして、洗浄して他の歯もきれいにしました。
ケース2:心臓に病気があって歯周病の治療を保留していたところ、皮膚に穴があいて血が出てきて食欲がなくなってしまったと来院された高齢のわんちゃんです。
緊急で早朝開院していた当院にいらっしゃいましたが、かかりつけの先生がいらっしゃるということで、当院では応急処置を実施することになりました。
患部に極度の痛みがあったため鎮静をかけて消炎鎮痛剤、抗生剤で治療をし患部を消毒しました。
心臓の病気はその重症度にもより麻酔の適応は変わりますが、心臓が悪くても使える麻酔や鎮静剤があり、心臓が悪くてもその子が一番困っていることを優先に治療を選択する必要があります。慎重に検討が必要です。
ケース3:慢性腎臓病の中齢の猫さんですが、治療中に突然全く食べなくなってしまいよだれが出てくるとおっしゃられました。そう言っているうちに顎がパンパンに腫れてきました。
歯周病からなることは珍しいガマ種になってしまいました。粘液貯留嚢胞とも言われます。下顎の真ん中が腫れて口が閉じなくなっています。
ガマ種は機械的、物理的に舌下腺の管(唾液が流れ出る管や出る場所)が障害されて唾液が不要に溜まってしまい舌の下が腫れる病気です。ぽこっと丸く腫れて腫瘍のように見えますが良性です。
人では歯磨きで口の中に傷がついてなってしまうケースがあるそうです。
この子は、腎臓が悪くなり全身の免疫力が落ちたところで歯周病があったためにガマ種になってしまったと考えます。
麻酔下で歯の処置をしたら腫れが引いて食べられるようになりました。
もちろん、前後で点滴などで腎臓の保護が必要です。
いずれの場合も歯周病菌が悪さをしているので、抗生剤の注射で一時的に引くことが多いですが、原因となる歯を除去しないと再発してしまいます。
高齢になると病気があって歯のことは後回しになりがちですが、突然悪化して全身状態が悪くなることはよくあります。
病気にあった麻酔や処置の仕方があるので、そこはご相談で負担を最小限にして処置することもできます。
食べられなくなるのが一番辛い症状です。
歯の状態の把握や歯周病など気になることがあればお気軽にご相談くださいね。