セカンドオピニオン CASE  続

セカンドオピニオンとは納得いく治療を受けるため、主治医とは違う獣医師(医者)に意見を求めることです
セカンドオピニオン はどうやって伝えたらいいか伝え方が難しいという方もいらっしゃいます。
参考までにどんなセカンドオピニオンのご相談があるか、病気などの紹介をかねてご紹介します。

前回からの続きです。

当院にはセカンドオピニオンでいらした高カルシウム血症 猫 MIX 3歳 男の子 

当院でも大学病院と同様に特発性の高カルシウム血症が一番疑われるとご説明しました。

しかし、セカンドオピニオンとしてこれで終わりだとオーナー様が相談しにきてくれた意味がありません。
かといって必要のない治療を気休めで提案してはいけません。

問題を整理すると
高カルシウムの原因としての病気がなかったのでよかった。
症状がないため、高カルシウムであること自体の身体への影響があるのか、治療しなければいけないのかという点をはっきりさせる。


高カルシウム血症 特発性(猫では多い)について

【高カルシウム血症の身体への影響】

  • 結石や石灰沈着の原因になる (高カルシウムの約15~30%の猫に結石があった。そのうちの7割がシュウ酸カルシウム結石だったというデータあり。)
  • 腎臓にダメージがあるいずれも長期に高カルシウムであったの場合です。

【症状】

高カルシウムの半分の子は症状がないと言われています。
症状があるとすると、嘔吐 、体重減少 、排尿関連のトラブル(飲水が増えることによる尿の増加によるものや膀胱炎など)、食欲不振と、他の病気でも起こりそうな症状で特殊ではありません。

【治療】

  • 食事療法
  • 治療薬(ビスフォスフォネート、プレドニゾロン)


この子は幸い症状がなく緊急性はないと判断しましたが、長期にわたる高カルシウムで腎不全のリスクとなると心配です。実際には、どのくらい長く存在すると腎不全になるのかというところはまだわかっていないそうです。
腎不全になってもカルシウムが上がることがあるため
腎臓病→高カルシウム?高カルシウム→腎臓病?と、卵が先かひよこが先かとどちらが原因だったかわからないケースもあります。

これらを考慮して将来のリスクがないとは言えないため、ご相談してカルシウムを下げる治療をすることになりました。

治療選択のポイント
緊急性がないため効果は弱いかもしれないが副作用がほぼなく継続できる食事療法をご提案しました。
食事療法の選択肢に高線維食あるため食事を変更し2ヶ月くらいで効果判定です。

2ヶ月後の血液検査ではカルシウムは正常値になっていました。
しかも、減量用のフードだったため、少しスリムになり体格もちょうどよくなっていました。
オーナー様も食事療法という安全な治療で良くなったのでとても喜ばれていました。

これで効果がない場合は他の手もあるのですが、私が治療した子は比較的この方法で良くなっています。
しかし、過去の海外の報告では20例ほどの猫の半数は食事だけではコントロールできず、薬も追加したと記載がありました。

このような流れでセカンドオピニオンをお受けしております。

オーナー様のご心配を軽減できるよう、かつ医療的にも適切な治療をご提案するように心がけています。
ご心配なことがあれば是非ご相談くださいね。

参考:
Textbook of Veterinary Internal Medicine, 8th Edition
Midkiff, A.M. et al. 2000. Journal of Veterinary Internal Medicine 14(6): 619–26.
Savary, Karine Cm. et al. 2000. Journal of Veterinary Internal Medicine 14(2): 184–89.
Finch, Natalie C. 2016. Journal of Feline Medicine and Surgery 18(5): 387–99.


この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。