犬と猫の不整脈

不整脈は心臓の異常なリズムのことです。

心臓は電気的信号が発生することにより心房と心室の心筋がうまく連動して動きます。その命令をだす部分をペースメーカーとなるところは、心臓の右上室にあり、“洞結節”として知られ心臓の電気インパルスを生成します。このインパルスは上部の心房を通って伝わり、房室結節として知られる部分に到達します。通常、房室結節は心臓の上部室と下部室の間の唯一の電気が通れるところであるため、ポンプ機能を持つ心室までインパルスを伝えることで、ポンプ室から血液が放出され、体に送り出されます。

不整脈は、この正常な刺激伝導系の一連の流れに異常をきたした心臓のリズム異常のことです。聴診器で不整脈を聴く(聴診)と、異常な心拍リズムが検出されることがあります 。ただし、多くの場合、不整脈は持続的ではなく断続的であるため常に存在するわけではないので、診察室での短時間の聴診では不整脈を除外できません

不整脈の症状(サイン)

多くの動物は、異常な心拍リズムが一時的で長く続いてなければ外見上は目立った徴候は示さず、また、示しても微妙であるため、高齢になったからとか、整形疾患、つまりどこか痛いのでは、などと誤認される場合があります。また、神経疾患と間違われるケースも多々あります。一般的なサインには、寝てばかりいる、家の中で横になることが多くなったり、元気がない、虚脱や失神または虚脱に近い状態(つまずく、ふらつく)、嘔吐、食欲低下などがあります。これらの症状は不整脈が出たり消えたりするにつれ、増えたり減ったりします。

原因

異常な心拍リズムには多くの原因があり、ベースに構造的心疾患(心臓の構造に異常がでる心疾患)が存在することがよくありますが、心疾患がないのに不整脈が出る場合もあります。また、その逆で、不整脈から構造的心疾患が起こる場合があります。これらのパターンでは予後が大きく異なる可能性があるためこれを確認することが大事です。また、心臓以外の病気が原因となっている場合もあります。たとえば、脾臓や脳の疾患(腫瘤や腫瘍など)、胃の位置異常(胃捻転)が起こったとき、赤血球数の低下(重度貧血)。これらは全て不整脈の原因となります。

診断

動物の異常な心拍リズムの原因を特定するために、いくつかの診断検査が使用されます。

1 つ目は、心臓の電気活動を非侵襲的(痛みがないこと)に記録し、波形を画面上に表示する心電図 (ECG、EKG) です。この検査により、獣医師は存在する異常な心拍リズムの種類を判断することができます。


2つ目は、構造的心疾患が存在するかどうかを判断することです。これを判断するためのゴールドスタンダードは心エコー検査(心臓超音波検査)です。心エコー図は、心臓の超音波検査であり心臓の二次元構造、心臓のポンプ機能と弛緩機能、心臓弁や大血管を通る血流を検査できるようにします。検査は非侵襲的で痛みがなくおおむね鎮静剤を使用せずに行えます。

その他各々必要となる検査には、胸部 X 線写真 (X 線)、血圧測定、血液検査、ホルター心電図などがあります。ホルター心電図は、ペットが自宅で装着し、通常の活動中に心臓のリズムを評価できる 24 時間心電図記録装置です。これは、ベースラインの ECG でまれに現れる異常な心拍リズムの頻度と重症度を判断するのに役立つ検査になります。

不整脈治療

治療は心疾患の有無や不整脈の種類と重症度によって異なります。軽度のリズム異常は通常、治療を必要としません。より重度な不整脈は、薬物療法(内科療法)などが選択肢としてあります。また、心不全を起こす不整脈や致死的な不整脈はペースメーカーの埋め込みによって治療が可能です。カテーテル治療はペースメーカー治療は2次診療施設をご紹介いたします。また、併発している構造的心疾患や、不整脈の原因となっている可能性のある心臓以外の疾患を治療することは必須となります。

不整脈は外見から判りずらい症状しかないことも多く、負担が少ない検査のため健康診断の一環として心電図を行うことをお勧めいたします。

また、気になる徴候がある場合もお気軽にお問い合わせくださいね。

この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。