強敵!シュウ酸カルシウム結石

“尿石症”これは、尿路系(腎臓〜尿管〜膀胱〜尿道)に石が形成されてしまう病気です。
犬も猫でも比較的一般的な病気ですが、その中でもこの25年間でずっと増え続けてきている結石があります。
猫では10倍に増えています。

それがシュウ酸カルシウム結石です。
人の尿結石ではこの石は一般的だそうですが、犬猫では一般的ではなく過去にはストラバイトという石が犬の結石症の6~7割、猫の結石の9割以上をしめていました。現在は犬猫でこの2つの結石の発生率は横ばいなんです。

シュウ酸カルシウム 犬での発生リスク因子

  • 5歳以上
  • 去勢雄
  • Mシュナウザー、ヨークシャーテリア、ビションフリーゼ、シーズー、トイプードル
  • 肥満
  • 高カルシウム血症
  • 副腎皮質機能亢進症

シュウ酸カルシウム 猫での発生リスク因子

  • ストラバイトを強く意識した酸性化食 これがシュウ酸カルシウムが増えた原因とも言われています
  • 中齢から高齢(実際には若い子でもあり)
  • 雄>雌 (去勢)
  • ペルシャ、ヒマラヤン、ラグドール、スコティッシュなど
  • 運動しない猫
  • 高カルシウム血症
引用: Canaine and Feline Nephrology and Urology 2e

【シュウ酸カルシウムの強敵ポイント】

  • フードで治療するだけでは”溶けない”=”治らない”
    (一方ストラバイトという石は処方食で溶けるので、しっかりフード管理をしましょう。)
  • 再発率がかなり高い。3年で再発する率が2割から5割


この強敵とどうやって戦うのでしょうか

これまでにシュウ酸カルシウムを溶かす食事の報告はなく、治療は基本的に手術で石を摘出することになります。
処方食で治療はできないものの食事の推奨はいくつかあります。

シュウ酸カルシウムの管理の推奨

  • 水分をとる。水分が多い食事にする。ウェットフードなどを取り入れる。飲水を促す方法を獣医師に相談する
  • カルシウムが過剰あるいは欠乏 
  • シュウ酸が多い食事(ほうれん草、大豆、イワシ、サツマイモ、アスパラガス、豆腐など)を避ける
  • 動物性蛋白が多すぎる食事を避ける
  • クエン酸添加(クエン酸アルカリ化のお薬があります)が有用
  • ビタミンCの過剰摂取しない
  • ビタミンB6の欠乏させない

水分を取り排尿を促す事はかなり大事なポイントになる印象です。
これは、他の結石や結晶でも共通したポイントですね。

食事と検診にまつわるよくある誤解

  • 時間が経った尿でも冷蔵庫に入れておいたので検査可能・・・最初はなかった結晶(結晶は結石よりさらに細かい成分です)が後から出てきてしまうこともあり誤診のもとです。新鮮尿で検査を。
  • 症状が良くなったから処方食はやめて大丈夫・・・体質や食事が結晶や結石形成だけではなく尿疾患に大きく関与します。症状があったのであれば再発リスクが高くあります。続ける場合もやめる場合も定期検査をして尿の性状を確認し獣医師と相談しましょう。
  • 処方されたフードを食べていれば大丈夫だから定期検査を受けない・・・年齢や環境でも適切なフードは変わります。あた結晶や結石が確認されたことがあったとしても、食べ始めた時とその種類が変わることだってあります。
  • 尿検査で結晶(石よりもっと細かい顕微鏡でわかるレベルのもの)がないと言われたから結石もない・・・結石はあるのに尿中に異常がないことはあります。むしろほとんどの結石が結晶を析出しないという報告があります。お腹の画像検査で定期的に確認しましょう。

尿石症を放置すると感染をおこしたり血尿や炎症の原因になります。
尿路閉塞(結石が尿路のどこかで詰まって尿が物理的に出なくなること)を起こすと急性腎不全になり命を落とします。助かっても腎臓へのダメージが強ければ長く元気で過ごすことは叶いません。

シュウ酸カルシウム結石はギザギザしています。
顕微鏡で確認できるシュウ酸カルシウムの結晶


思い込みは危険です。軽い症状だからと放っておくと後々命まで脅かされてしまいます。

お家では尿の頻度や量を普段から注意してみてあげてください。些細な変化に気がつく事が早期発見につながります。
長く健康でいてほしいので、しっかりした検診プランや定期チェックで良好に保ってあげたいですね。

この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。