クッシング症候群

  • 水を飲む量が増えたかも?
  • すごく食欲があって声をかけても黙々と食べ続ける。
  • 全体的に毛が少薄くなって皮膚の色がみえる
  • お腹がでっぷりしている

これらの徴候はありませんか?中高齢になって来て珍しくないこれらの症状は内分泌の病気(ホルモン疾患とも)が隠れているかもしれません。

犬で比較的多いクッシング症候群はそのホルモン疾患の一つです。猫では稀で、罹患しても犬のような症状が出ないことも多いです。
上記のような症状があってもお家の方から相談を受けて発見されることは少なく、健康診断で各種値に異常値がでる、エコー検査で副腎の腫れが見つかるなど、偶発的に発見されることが多いです。
なぜならば、一見すると表面からは病気があるようには見えなず元気に見えるからとされます。

体内でコルチゾールと呼ばれるホルモンが過剰に生成されると発生します。コルチゾールは、腎臓の頭側にある 2 つの小さな腺組織である副腎によって生成および貯蔵されます。

コルチゾールは身体にある天然ステロイドの1つでコルチゾールは感染症と闘い、適切な体重と状態を維持するのにも役立ちます。しかし、コルチゾールが過剰になると免疫システムが弱まり、体が他の病気や感染症にかかりやすくなります。

好発犬種

犬の自然発生クッシングの好発品種は、プードル、ダックスフント、ビーグル、ボストンテリア、ボクサー8歳以上の発症が多いとされます。

原因、2つのタイプ

クッシング症候群の発生率は年間 1000 頭あたり 1 ~ 2 例とされます。少なく思えますが、実際診療していると比較的遭遇します。

クッシング症候群の原因は2パターンあり、1つは約 80% ~ 85% は下垂体依存性(PDH)です。つまり、脳の基部にある豆粒大の下垂体の腫瘍によるものです。残りの 15 ~ 20% では、コルチゾール分泌性副腎皮質腫瘍 (AT、ACT) が原因であることが最も多く、ほとんどの場合、副腎皮質の癌です。二つの副腎のうち片側で起こることが多いですが、両側のこともあります。

他のまれな原因には、異所性 ACTH 症候群 、および食事依存性コルチゾール過剰症 が含まれます。

原因によって、どのような治療法変わることがあります。

診断


血液検査を使用してクッシング病を診断し、下垂体または副腎によって引き起こされる病気を区別します。副腎の腫瘍の検出に超音波検査を使用することもあります。

クッシング病の症状

クッシング病は通常、中年から高齢の犬に発生します。この病気はゆっくりと進行し、初期の徴候に気づかないこともありますが、経過を経て色々な不具合が出て来ます。症状としては以下のものがあります。

  • 喉が渇く 飲水量が増える
  • 尿量の増加
  • 食欲の増加
  • 活動の低下
  • 過剰な喘ぎ声
  • パンティング
  • 皮膚が薄い、または弱い(皮膚科で検査することも多いです。)
  • 脱毛
  • 再発性の皮膚感染症
  • 腹部(肝臓)肥大から「太鼓腹」に見える

診断

症状、血液検査、ACTH刺激試験(プラス、あるいは低用量デキサメタゾン)、エコー検査などの組み合わせで診断します。

クッシング病の治療

クッシング症候群は初期に重い症状がでないものの、リスクの一つに感染や血栓塞栓症のリスクがあり、肺に血栓がつまる肺血栓塞栓症はこの疾患の死因としては高いことがわかっています。

治療目標は、コルチゾール過剰の原因を除去し、正常コルチゾールに抑えることで臨床徴候を軽減し長期合併症と死亡率を減少させ、生活の質をあげることです。

ほとんどの場合はPDHとATのクッシング病の両方を内科療法で治療します。
病気がATの場合は腫瘍が他に広がっていない場合には、副腎腫瘍を切除することになります。

原因腫瘍の外科的除去、すなわちPDHの場合は下垂体切除術、ACTの場合は副腎切除術、またはPDHの場合は放射線療法である。これらの選択肢にはリスクがないわけではなく、広く利用できるわけではなく、すべての患者に適しているわけではないため、薬物療法がよく使用されます。 PDH の場合、ステロイド生成阻害剤であるトリロスタンが最もよく使用されます。 ACT の場合は、トリロスタンまたは副腎皮質溶解薬ミトタンのいずれかを使用できます。

PDHなどのクッシング病は通常、生涯にわたる病気で薬で管理した場合は定期的な血液検査が重要です。 血液検査と治療への反応をモニタリングすることにより適切な用量を決定できます。
場合によっては定期的に調整する必要があります。通常、治療開始後最初の数か月は頻繁に血液検査と獣医師の診察が必要となり、その後は数か月ごとに検査が必要になります。

トリロスタンは過去に使われていた量より低用量での服用が推奨されており、低用量を1日2回にわけることで副作用できるだけ出さないようにする治療が主流です。
薬の一般的な副作用は、食欲不振または食欲低下、嘔吐、下痢、元気消失です(散髪的、時々だけ起こることもあります)。場合によっては、血混じりの下痢、虚脱、重度のナトリウム/カリウム異常などのより重篤な副作用が発生します。これはホルモンを抑えすぎてコルチゾール低下状態(アジソン)にまでなった場合です。
しっかり定期検査で薬の量を調整すればこのような副作用の心配はだいぶなくなります。

健康診断はこのような内分泌の病気を発見できる可能性があります。
症状があまり出ないなら病気があってもそれを気がつかない方が幸せという考えでは、悪化して病気による合併症のせいで治療が困難になるまで放っておくことになります。できるだけ健康で長生きさせてあげたいですよね。

気になることがある場合はご相談くださいね。

引用文献:Sanders K, et al.,2018
Labelle et al., 2004
Galac et al., 2010a
Galac et al., 2008
O’Neill et al., 201
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当院は早朝7時から(日曜祝日は9時〜)完全予約制で診療を行なっています。

体調を崩して朝も治っていない場合、すぐ対応できます。(緊急時はすぐにお電話ください)
セカンドオピニオンも受けたいけど、獣医師にどのように伝えたらいいか、伝え方がわからないなどお困りの方もお気軽に是非ご相談くださいね。

この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。